HPV(ヒトパピローマウイルス)は、100種類以上の型(タイプ)が存在し、それぞれ異なる症状やリスクを持っています。
高リスク型
HPV(ヒトパピローマウイルス)の中でも、高リスク型は主にがんの原因となるタイプであり、特に子宮頸がんとの関連が強いです。
以下の型は、特にがんのリスクが高いとされています。
HPV型 | 主な関連がん | 特長・リスク |
---|---|---|
16型 | 子宮頸がん、中咽頭がん、肛門がん、外陰がん、腟がん、陰茎がん | 最も発がんリスクが高く、子宮頸がんの50%以上の原因 |
18型 | 子宮頸がん、腟がん、肛門がん、外陰がん | 16型に次いでリスクが高く、子宮頸がんの約20%を占める |
31型 | 子宮頸がん、腟がん、肛門がん | 16型・18型に次いで高リスク、異形成の原因にもなる |
33型 | 子宮頸がん、腟がん、肛門がん | 比較的まれだが、高リスクグループに属する |
35型 | 子宮頸がん、中咽頭がん(まれ)、腟がん、外陰がん、肛門がん | 発がんリスクは16型・18型より低いが、31型・33型・52型・58型と同程度のリスクがある |
45型 | 子宮頸がん、肛門がん | 腺がん(子宮頸部の深部にできるがん)と関連性が高い |
52型 | 子宮頸がん、肛門がん | 日本で比較的多く見られ、20~30代女性での感染が多い |
58型 | 子宮頸がん、肛門がん | 52型と同様に日本での感染例が多い |
16型・18型は特にリスクが高く、子宮頸がんの約70%を占めるため要注意です。
上記以外でもハイリスクグループには、中等度リスクに近いとされる39型・51型・56型・59型・68型・70型もあります。
HPV型 | 発がんリスク | 主な関連がん | 特長・リスク |
---|---|---|---|
39型 | 中程度 | 子宮頸がん、肛門がん、外陰がん、腟がん | 免疫が低いと持続感染しやすい |
51型 | 中~高 | 子宮頸がん、肛門がん | アジア圏で多く、高度異形成のリスクあり |
56型 | 低~中 | 子宮頸がん、肛門がん | がん化リスクは比較的低め |
59型 | 中~高 | 子宮頸がん、肛門がん | 45型と似た性質を持ち、腺がんとの関連も |
68型 | 中程度 | 子宮頸がん、肛門がん、膀胱がん(まれ) | 持続感染しやすく異形成のリスクあり |
70型 | 低~中 | 子宮頸がん | 発がんリスクは低めで、自然消失しやすい |
低リスク型
低リスク型HPVは、がんの原因にはなりにくいものの、尖圭コンジローマ(性器のイボ)や軽度の異形成を引き起こす可能性があります。
HPV型 | 関連疾患 | 特長・リスク |
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6型 | ・尖圭コンジローマ(性器周辺にできるイボ) ・喉頭乳頭腫(のどにできるイボ) | ・尖圭コンジローマの約90%の原因(11型と合わせて) ・発がん性はほぼなし ・ワクチン(ガーダシル、シルガード9)で予防可能 |
11型 | ・尖圭コンジローマ ・喉頭乳頭腫(特に小児で呼吸障害の原因になることがある) | ・6型と同様、尖圭コンジローマの原因として多い ・6型よりもやや悪性化しやすいが、発がんリスクは低い ・ワクチン(ガーダシル、シルガード9)で予防可能 |
41型 | ・軽度の異形成(がん化する可能性は低い) ・皮膚のイボ | ・41型単独での性器疾患のリスクは低い ・自然排除されることが多い |
42型 | ・軽度の異形成 ・まれに尖圭コンジローマ | ・発がんリスクはほぼなし ・感染してもほとんどのケースで無症状のまま消失 |
43型 | ・軽度の異形成 ・まれに尖圭コンジローマ | ・42型と同様、発がん性はない ・感染後に自然消失するケースが多い |
44型 | ・軽度の異形成 ・まれに尖圭コンジローマ | ・42型・43型と同じグループに分類される ・自然排除されやすく、発がんリスクは低い |
HPV6型・11型は尖圭コンジローマの主な原因となるため、ワクチン接種が有効な予防手段となります。その他の低リスク型は、通常はがん化しないため、過度な心配は不要ですが、異形成が見つかった場合は定期的な経過観察が重要です。
その他の型
- 口腔や皮膚に感染するものもあり、一部は皮膚のイボの原因になる。
- 主な型:1型、2型、3型、4型(手足のイボ)、5型、8型(稀に皮膚がんと関連)
予防と対策
HPVワクチン(予防接種)
- シルガード9(9価ワクチン):16, 18, 31, 33, 45, 52, 58, 6, 11型に対応
- ガーダシル(4価ワクチン):16, 18, 6, 11型に対応
- サーバリックス(2価ワクチン):16, 18型に対応
定期検診(早期発見)
- 子宮頸がん検診(細胞診・HPV検査)を20歳以上の女性は定期的に受ける
HPVは主に性行為を介して多くの人が一度は感染するウイルスですが、ワクチンや定期検診で予防・早期発見が可能です。
