ピルは排卵をストップし、子宮内膜の増殖を抑える作用があります。
排卵は妊娠を希望するとき以外は必要ないので、ピルで人工的に排卵を止めることは特に問題ありません。むしろ排卵や生理を繰り返すことは女性の身体にとって大きな負担となり、子宮や卵巣の病気の原因にもなることから、ピルの服用で排卵を抑えることは子宮内膜症や卵巣がんをはじめとする婦人科系疾患の予防にも役立つと考えられています。
(現代女性は出産回数が少なく生理期間も長くなるので、子宮への負担が大きいといえます。)
ピルには避妊以外にも女性の強い味方となる以下のような副効果が期待できます。
- 生理痛・過多月経の緩和
- 生理不順の改善
- 月経前症候群(PMS)の緩和
- 大人ニキビ・多毛改善
- 更年期症状・プレ更年期の改善
- 卵巣がん・子宮体がんの予防
- 月経移動(生理日のコントロール)
ピルを上手く活用することで、女性のQOL向上にも大きく役立ちますが、ピルの普及率は10%台とまだまだ低く、多様なメリットがあるのは分かっていても、ピルを使ってみたいけど不安感がある人も多いのではないでしょうか。
そこでピルに関することで特に気になる関心事をまとめてみました。
01ピルの副作用(吐き気、頭痛、体重増加、血栓リスク、性欲低下など)
02ピルの安全性(長期間使用しても問題ないの?健康への影響(メリット・デメリット)は?)
03生理への影響はあるの?(生理周期の安定、経血量の変化、生理痛の軽減)
04ピルの避妊効果としてどのくらいの確率で避妊できるの?(成功率・避妊のメカニズム・他の避妊法との比較・避妊効果が落ちる原因)
05ピルの服用が将来の妊娠に与える影響は?(ピルをやめた後の妊娠しやすさ・排卵はいつ再開?将来の妊娠に与えるメリット・やめた後に妊娠しづらいケースは?)
06他の薬との飲み合わせで注意すべきなのは?(避妊効果が低下する薬・併用注意の薬・サプリとの相性)
今回は、
【2】ピルの安全性(長期間使用しても問題ないの?健康への影響(メリット・デメリット)は?)
について解説します。
1)長期間使用しても問題ない?
基本的には安全とされており、健康な女性が適切に使用すれば長期間の服用が可能です。
世界保健機関(WHO)や日本産科婦人科学会も長期間の服用を推奨しています。
40代以降も健康状態に問題がなければ使用可能です(ただし定期的な検査が推奨される)。
ただし、以下の点には注意が必要です。
- 35歳以上で喫煙している場合、血栓症のリスクが高まるため注意が必要。
- 定期的に血圧・血液検査を受けることが推奨される。
- 持病がある場合(高血圧・糖尿病・心疾患など)は医師に相談。
2)健康への影響(メリット・デメリット)
【メリット(健康によい影響)】
(1)女性特有の病気のリスクを減らす
- 子宮体がん・卵巣がんのリスクを低下
- 子宮内膜症・子宮筋腫の進行を抑制(症状の悪化を防ぐ)
(2)生理トラブルの改善
- 生理痛の軽減(子宮内膜の増殖を抑え、痛みの原因を減らす)
- 生理周期の安定化(不規則な月経をコントロール)
- 経血量の減少(貧血予防にも効果的)
(3)更年期の症状を軽減
- エストロゲン補充効果があり、更年期障害の症状(ホットフラッシュ・不眠・気分の落ち込み)を緩和
【デメリット(リスクや注意点)】
(1)血栓症のリスク
- 長期間使用すると、まれに血栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓症など)のリスクが上昇
- 特にリスクが高い人
-35歳以上の喫煙者
-肥満・高血圧・糖尿病のある人
-家族に血栓症の既往歴がある人
(2)乳がんリスクについて
- ピルの使用がわずかに乳がんリスクを上げる可能性がある。
ただし、リスクの上昇率は低く、服用をやめると数年後に元のリスクに戻る。 - 定期的な乳がん検診を受けることが推奨される
(3) 肝機能への影響(まれ)
- 長期間服用すると、まれに肝腫瘍(良性)のリスクが上がることがある。
- 肝機能検査を定期的に受けると安心。
【ピルを長期間使用する際のポイント】
- 定期的な健康チェックを受ける(血圧・血液検査・乳がん検診)
- リスクがある人は、エストロゲンを含まない「ミニピル」に変更も検討
- 40代以降はホルモン補充療法(HRT)との併用も選択肢に
長期間の使用は基本的に安全で、むしろ健康メリットが多いです。血栓症や乳がんリスクを考慮し、定期的な検診が重要です。喫煙者やリスクの高い人は、種類を選ぶことで安全性を高められます。
ピルの長期使用は、正しい知識を持ち、医師と相談しながら行えば、安全に続けることができます。
次回は、
【3】生理への影響はあるの?(生理周期の安定、経血量の変化、生理痛の軽減)
について解説します。
